女神・雷帝 VS 武神 

 身長50メートルのエリザは城壁の外で街を癒していた。
 スサノオは城壁でエリザを見ていた。

 「 この街の食糧を全ていただく! 」

 大柄の男が中央広場で叫んだ。
 街のみんなは驚いて男を見た。
 エリザも驚いてその男を見下ろした。

 「 巨大な女よ。 巨大化の魔法とオイラの腕っ節。 どっちが強いか勝負だ! 」

 大柄の男がエリザを見上げて指を指して言った。

 「 勝負なんてしません。 」

 エリザがテレパシーで男に言った。
 巨大な女という言葉に傷ついた。

 「 オイラの名前はブシン。 オイラが得意とする魔法はこれだ! 」

 ブシンは家を両手で持ち上げて後ろに投げ飛ばした。
 街のみんなは怯え逃げ惑った。
 エリザは自分が原因ではないとはいえ街のみんなが怯え逃げ惑う姿を見ると自分が原因のように思って落ち込んだ。

 「 止めてください! 」


 エリザがテレパシーで言った。

 「 止めさせてみな。 」

 ブシンが言った。
 ブシンの屈強な肉体を雷が貫いた。

 「 やってみた。 」

 スサノオが言った。

 「 なーんだー? 雷の魔法か? 」

 ブシンが言った。

 「 うん。 気絶しないの? 」

 スサノオが言った。

 「 気絶させてみるがいい。 」 

 ブシンが腕組して言った。
 エリザは何もできずに見下ろしている。

 「 ほーい。 」


 「 ちっ。 街を巻き込んで攻撃してもいい? エリザ女神。 」

 スサノオが言った。

 「 駄目です。 」

 エリザは見下ろして即答した。

 「 エリザ女神がパンチすれば一発でしょ。 」

 スサノオが言った。

 「 そんなことできません! 」

 エリザがテレパシーで言った。
 街のみんなは訳が分からず大混乱している。
 エリザは申し訳なさを感じながら焦った。

 「 勝負なら街の外でやりましょう。 」

 エリザはブシンを外に出すために言った。

 「 街の中じゃないと恐くてエリザ女神と喧嘩できないのか。 」

 スサノオが言った。


 エリザは咄嗟に巨大化した。
 巨大化すれば武神も心が折れると思ったからだ。

 「 エリザ女神ナイス。 」

 スサノオがエリザに雷を打ち込んで一気に巨大化させた。

 「 止めてください! 」

 エリザが驚きながら街を見下ろして言った。
 街はエリザの手のひらほどの大きさに見える。

 「 今のエリザ女神じゃ家ごと食べなきゃ満腹にならないよ。 」

 スサノオが言った。

 「 どういう意味ですか!? 」

 エリザは顔を赤らめながら怒ってスサノオを見下ろした。
 街のみんなは怯えて逃げ惑った。
 エリザはすぐに我に返って街のみんなに謝った。

 「 ごめんなさい。 」

 エリザは声を出して大人しく謝った。


 エリザの天空に君臨する女神の叫びのような地声で街が支配されて街のみんなは目が覚めたように落ち着いた。
 街のみんなは驚き怯えて地面に倒れた。幸い怪我はなかった。エリザは謝った。

 「 まさに女神。 」

 スサノオが満足そうに言った。

 「 よーし。 腹もいっぱいになったし始めるか。 行くぞ。 」

 ブシンはスサノオをパンチで吹っ飛ばした。
 スサノオは家にぶつかってめり込んだ。

 「 キャア! 」

 エリザは思わず悲鳴を上げた。
 その恐ろしく巨大な悲鳴で街は再び大混乱になった。

 「 さーて。 次は巨大な女だ。 」

 ブシンがそういって拳に魔力を溜めた。

 「 エリザ女神。 俺は癒し魔法が使えない。 癒してくれ。 」

 スサノオがテレパシーでエリザに言った。 


 「 分かりました。 」

 エリザはすぐさまスサノオが吹っ飛んだところに巨大な手をかざして癒した。

 「 オイラを殴ったりしないのか? 」

 ブシンがエリザにテレパシーで言った。
 たしかに指先でブシンを突けばどうにでもなるかもしれない。
 しかしそんなことをすれば街を壊してしまうし街のみんなも怯えてしまう。

 ブシンは教会を引っこ抜いてエリザに向かって投げた。
 エリザは慌てて教会をなるべく丁寧に受け止めた。
 衝撃で教会は崩れてしまった。
 エリザが潰したわけでもないのに手の中で崩れる小さな教会を見るとエリザは凄まじい罪悪感に苛まれた。

 「 俺に魔力を分けてくれ。 今のエリザ女神なら俺の何万倍も魔力があるはずだ。 」

 スサノオがテレパシーでエリザに語りかけた。

 「 分かりました。 」 


 エリザはスサノオが吹っ飛ばされた家の上で巨大な手をかざした。
 エリザはスサノオに魔力を送り続けた。

 「 デカイ図体なのに何もしないのか。 」

 ブシンの心ない言葉がエリザを深く傷つける。

 「 デカイ図体で街を壊すお前よりマシだ。 」

 スサノオは雷になってブシンに接近して心臓に手をかざしてエリザの魔力を圧縮した電撃でブシンの心臓を止めました。

 「 こ・・・・・・殺してしまったのですか。 」

 エリザは血の気が引いたように言った。

 「 癒したら? 」

 スサノオが言った。
 エリザが急いで癒したらブシンは回復した。
 ブシンは謝って出て行った。 


 エリザは手のひらサイズの街を癒した。
 街からは安堵の気持ちが優しく伝わってきた。
 エリザはほっとした。

 エリザは改めて街を見下ろすと自分を見上げて感謝の気持ちを送る街のみんなに胸が熱くなった。
 胸で支配することもできてしまうほど小さな街に住む小さなみんなを胸で抱きしめたくなった。

 「 殺してしまってはいけませんよ。 約束してください。 」

 エリザが巨大な顔をスサノオに近づけて言った。
 エリザのド迫力にスサノオが恐かった。

 「 分かったよ。 エリザ女神。 」

 スサノオが素直に言った。

 「 それにあのときデカイ図体だけどマシって言いませんでしたか? 」

 エリザが微笑を含んだ恐ろしい剣幕で言った。

 「 言ってないよ、そんなこと。 」

 スサノオは縮こまるように言った。